四 季 雑 感(26)
樫村 慶一
神宮外苑の銀杏 (2007~2013)
今年も神宮外苑の銀杏が黄色くなった。普通には晩秋の葉の色を”紅葉”と言うが、ここは”黄葉”である。ご存知の方々も多いと思うが、青山通りから神宮絵画館までのおよそ300米の道の両側に2列ずつ、樹齢100年超、最高28米、最大幹周り2.9米の雄の銀杏が146本、見事な並木道を作っている。葉は比較的小さい。私は毎年、色つきの頃合を見計らって鑑賞に行っているが、12月5日の前後3日位が見所になる。インターネットを開いて、最高の見ごろを探るのだが、2007年から毎年行くようになって今年までの7年間で、”今日が一番の見ごろ”と思えたのは2回しかない。ある年は、黄金のトンネルをくぐり、また、別の年には金色の絨毯の上を歩く。7年間の様子を並べてみた。1枚ずつめくってご覧下され。 毎年、絵画館前の広場には、東京都のライセンスを得た”ヘブン・アーチスト(大道芸人)”が芸を競っていたし、青山通りの歩道には茨城から来た甘い焼き芋を売る屋台があったのに、今年はどうした具合かどれも姿を見せない。焼き芋を楽しみにしてきた女房殿は不満である。なにか不都合でもあったのかと気がかりだ。
銀杏通りから渋谷方面にかけておよそ 1.2 キロほど歩くと原宿駅に通じる表参道である。この参道には、銀杏とは違って、欅の大木の並木が続く。この道の両側には、外国の有名ブランドの店が肩をひしめかして連なり、アルファベットの文字で埋まった縦横の看板が溢れている。店構えと言い、色彩と言い、あたかも外国へ来たような錯覚を覚える。看板の文字は皆読めるのだろうか、老人には読めても意味が全く分からないものもある。
そして、そこここに、何やら若い男女の行列ができている。なにごとかと覗いてみて、ヘーと言ったものだ。なんと、ポップコーンやら、ワッフルの店の行列なのである。どこにでもあるお菓子なのに、よくよく美味しいと評判の店なのかもしれないが、わざわざこんな食べ物に行列を作るなんて、私には理解できかねる。平和ぼけしているなと思うのみである。
平和とは関係ない話であるが、親が子供を殺す、親族間で殺し合う、馬鹿が馬鹿に騙される、車の事故の多発、後期高齢者の年代には、想像だにできなかったような事件・事故が起きる。そして、目を外に転じると、中国の横暴な仕草やら、はるか遠く、シリアやアフガニスタン、イラクそしてタイ、暴動や反乱の連鎖、そうかと思うと、マンデラ元大統領の追悼式で、オバマ大統領とキューバのカストロ(弟)議長が握手したとか、また、日本にとってはお目出度い話であるが、南の海に新島が誕生とか、そのほか、いいこと悪いこと数え切れない話題がひしめいている。それぞれを ”なんで” といいたいところだが、
私は、これらは全て一つの要因・遠因からきていると思う。それは何だ?! 民放のCMのタイミングではないが、もったいぶらないで言うと、マウンダー現象(注)と言う、太陽活動が縮小期に入り黒点が大幅に減少したことによるためではないかと思っている。
太陽活動の鈍化に伴い地球の極地の地磁気が弱まり、宇宙から降り注ぐ宇宙線から地球を守るオーロラが低くなって減ってきた。この結果、地球自体と生物が平常より多くの宇宙線を浴びるようになる。宇宙線は何処でも通過するので、人間のあらゆる細胞やDNAに入り込み人間の精神機能にも影響を与える。そのため、肉体的活動を鈍くし、思考力を減退させ平常心を失わせる。こうして、前回17世紀のマウンダー極少期のときと同じように、国内、海外において、知られているようにもろもろの好ましからざる現象が起きている。また、自然現象としても、海水温度異常、地震、台風、豪雨、竜巻の多発、北南極の氷の溶解などなどの原因となっている。
17世紀の極少期のときには、日本でも徳川綱吉が鎖国令、生類哀れみ令などの正常ではない法令を発布、富士山噴火、何回もの飢饉が起こった。また、ロンドンのテームズ川が凍結し、ヨーロッパや米国が夏至でも夏らしくなかった、などなど、が言われている。すべてが太陽活動の縮小の結果だと思うと納得できる。
マウンダー現象は70年くらい続くと言われている。となると、我々の子供はおろか、孫どころか曾孫かまたその子供位まで影響が続くわけだ。気が遠くなる。寿命通帳の残高が少ない人種にとっては、今日一日、明日一日を大切に、楽しく暮らすことだけ考えていけばよいのだと、年末になって改めて思う。来年は、わが干支であるが、たいした期待は持てそうもない。情けないことではあるが。 (2013.12.15 記 )
(注)マウンダー現象:1970年に認められた英国人エドワード・マウンダーが発見した現象で、太陽活動が極少になり黒点が大幅に減少した時期のこと。前回は1645年から1715年まで70年間続いた。このほかにも、過去2,3回寒冷期の遠因になったとされる極少期がある。