四 季 雑 感 (28)              樫村 慶一 
    ”ウインドウズのOS入替大作戦”顛末記

 この3月末、私は5年間使ってきたウインドウXPを、ついに”7”に換えることにした。散々使い慣れたXPをなぜ取り替えなくちゃならないんだ、とあらぬ方に怒りをぶちまけたりしたけど、結局、友人からも、黴菌持ちとは付き合えないと言われたし、世間の風潮も頑張るには不利な情勢になってきたし、とうとう長いものに巻かれる羽目になってしまった。幸い、私のパソコンは2009年に買ったときはXP全盛期なのでXPを入れたが、7のCDも付いて来ていた。パソコンの仕様も7に対応するように出来ていた。
 今回の作戦では、入れ替えそのものはベテランにお任せしたので簡単に入ったが、その後は、やはり自分で研究しなくてはならない。暗闇で壁をなでるように、一つ一つのアプリケーション毎にタスク項目をみては、こんな動作をするのであろう、と想像しながら恐る恐るクリックしては、結果に納得したり驚いたりもした。課題は実に多い。細かいことま含めると数十項目はあるだろう。新しい機能を発見しながら日々が進歩である。ただ、アドレス帳の復元がどうしても出来ないので、約200人分をキーボードで作成した。
 しかし、OSの入れ替えなんて、誰もがいつかは経験していると思う、こんな題材を、わざわざ「四季雑感」に取り上げたのには別の理由がある。次の三題話を読んで、参考にして頂ければ有難いと思うからである。

.ダウンロードで買ったソフトがとんだ曲者だった話
 私のパソコン遊びの目的は、インターネットのサーフィンやメール交換が主ではなく、ホームページ・ビルダー(以下HPB)を使ってHTML形式文のエッセイやドキュメンタリを作成し、写真などと一緒にホームページに掲載したり、k-unetへ投稿したり、アドビ・フォートショップ(以下FS)を使う写真の加工や整理、それにアニメの作成などである。特に、新しい題材を見つけてアニメを作る時は、時間の過ぎるのを忘れる。従って、OSを新しくしても、この楽しみを支える、HPBとFSは絶対に欠かせないものである。
 OSを新しくするに当たり、今までのバージョン (HPBはバージョン7、FSは6.0)が使えるかどうかを確かめた。しかし残念ながら、どちらもおよそ10年も昔の製品なので、ウンドウ7には対応出来ないことが分かった。そこで、アマゾンから両方を購入することにした。HPBはバージョン18のCD版が11700円、FSは最新のCS6のダウンロード版が13000円である。FSは新品のCDは10万円近くする代物だ。HPBはスムースにインストールが済み、順調に動作した。今までのバージョン7と10世代以上も離れているが、新しい機能が増えた他は、画面の基本的なレイアウトや操作はあまり変わらないため、すんなり受け入れることができた。
 問題はFSのダウンロードである。出品者から送られてきたダウンロード用URLを開いた。これが地獄の始まりであった。開いた画面にはFSのいろいろなバージョンの名前がずらり、その他にアドビ社以外のソフト名がこれまた何十と並んでいる。しかし、私が買おうと思った肝心の「photoshop CS6]という名前がない。似たような名前を幾つかクリックしたのが運の尽き、10本近い英語版の意味の分からない、悪性のソフトが侵入してきた。そいつらが我が物顔にディスクトップ画面を占領し、それぞれが自分のトップ画面を写しだすので、7,8枚もの英語画面が重なって動かない。パソコン内に空き巣が入ったような乱雑振りだ。
 右上のX印などどこ吹く風で、コントロールパネルの「プログラムの削除」から削除しようとすると、”このプログラムを削除してもいいのか”と英語で書かれた枠が出る。その後にいろいろ書いてあるが、残念ながら私には完全には理解できない。一番下に[yes]、[no]の窓がある。ご存知だろうが、日本語では不要なことを”結構”ですと言う。これは日本語なら”yes”だけど、外国語では”NO”と言わないといけない。本文が意味不明では怖くてどちらも押せない。やむなく電源を落とし再起動するも同じ状態になる。挙句の果てに、ネットワークアダプターの中のドライバーが壊されてインターネットは途絶、メディアプレイヤーが消滅、プリンターソフトまでがおかしくなってしまった。
 困り果ててデル社のサポートに助けを求めた。直ちに電話サポート契約を結び、リモートコントロールで削除、修復してもらった。年末までの契約で10500円である。直ちにアマゾンを通して出品者に抗議したが、まったくの無しの礫、ダウンロードなのに配送料まで取る始末である。アマゾンに厳重に抗議した結果返金に応じたが、その理由がなんと「アカウントの調整」と言う訳の分からない理由になっていた。

2博物館行きのソフトが、ウイン7の中で生き生きと動く話 
 上記で述べたが、今まで使っていたフォートショップのバージョン6.0と言うのは、もう博物館行きのようなもので、アドビ社のホームページを見ても、ウインドウズ7では対応出来ないとなっている。そのため新しいものを買おうとして上記1.の騒ぎが起こったのであるが、その後、CS6と言うのはプロ用で素人には使いこなせないと言うことが分かり、一般向きのエレメント11を今度はCDで買った。5000円である。インストールしたが、ホームページビルダーの新バージョンの場合と違い、かなり画面レイアウトや操作手順が違う。しかし、これは慣れなくてはならないと一生懸命に触ってみた。マニュアルがないので、今までのバージョン6.0の経験だけで弄るしか方法がない。かなり想像力が要る難しい作業である。
 そのとき、神の啓示の如きイメージが閃いた。それは、もう使えないはずの今までのバージョン6.0を、もし再度入れたらどうなるんだろうと言う、まったく興味本位の考えである。古いCDをインストールしたらまともに読み込んでくれるではないか。へーーと驚きながら、今度は立ち上げた。これも立ち上がる。これでもかと思って、1枚の写真を開いて今までの手順で処理してみた。今までと比べて、ずいぶんと処理が遅く感じるが一応は動く。最後はプリントである。これができれば、アドビのホームページはなんだったのかということになりかねない。プリンターを動かして固唾を呑んで結果を待っていた。しかしプリンター表示は印刷中を表しているのに動かない。やっぱりだめかと諦めかけた数分後に漸く印刷された。考えてみると、動作はかなり遅かったけど、一応は正常に動いたのだから諦めるのは惜しい。原因は新旧の二つのFSがインストールされていて、互いに干渉するから遅くなるのじゃないかと思った。そして、とてつもないことを思いついた。
 新らしいエレメント11を削除して、旧バージョン6.0だけにすると言う「逆転の発想」である。なんてことはない、わざわざ買ったソフトを棚上げすることである。結果はどうか、私はこの瞬間を、10年前の化石のようなソフトが生き生きと動く様子を、アドビ社の人に襟を正して見てもらいたいと思った。勿論プリンタも快調だ。アドビのホームページは結果的に嘘だった。そして私は5000円損をした。同じように、ホームページビルダーの旧バージョン7を入れてみたが、こちらは「見たことがないプログラムがある」と、正直なコメントがでて終わりになった。当たり前といば当たり前でもある。教訓として、”メーカーの言うことを鵜呑みにすべからず”、と言うことを体験したというお話である。

3新規インストールにアップデート項目145、ダウンロードに17時間もかかった話
 ウインドウズ7をインストールしたのは日曜日であった。アップデートがなぜ、その日すぐに始まらなかったのかは分からない。翌日の夜7時頃、今日の作業を止めようとシャットダウンをクリックしたときから始まり、アップデートは延々と続いた。最初の画面に145項目と出ていたので、これはずごいな、もっともウインドウズ7が世に出てから何年か知らないが、現在ではウインドウズのOSでは一番使われていると言われるのだから、実績は相当あり、その分のアップデートもかなりあるのは理解できる。
 ところが、夜寝る前(11時半頃)に覘いたらまだやっている。そのまま寝て翌朝9時頃に開いてみて驚きは頂点に達した。なんとまだ続いているのだ。画面表示は145個中96個と出ていた。一晩かかって100個終わらないのだ。へーと呟いてパソコンを離れた。10時頃はまだ継続中。どうやら終わったのはお昼少し前だったように思う。なんと19時頃から翌日昼頃まで、延々と17時間近くもアップデートを続けていた。その後も10個程度のアップデートが2回ほどあった。インストールしたCDは、おそらく初版ものだろからまったく中身が替わってしまったんじゃないかと思う。

 OSの入れ替えは難しい。ウインドウ7はサポート期限が延長されて2020年オリンピックの年まで延長された。後6年は楽しめる。その時は、8を越えて9とかが出来ているだろう。90歳になる老体が、まったく替わってしまうだろう操作方法に耐えられるだろうか。そんなことより、自分が生きているかどうか分からない。すでに、そんな先のことまで考えられる歳ではないのだから。(2014.4 記)