四 季 雑 感  (29)           樫村 慶一
    またまた 太陽活動極少期現象(マウンダー現象)のこと

 四季雑感を随分とご無沙汰してしまった。書こう書こうと思いつつ、題材が四散していて厚みがなく、纏まった文章にならなかったためである。それに後で述べるようなやっかいな病気になったせいもある。言い訳はこのくらいにして、目を世界に向ければ戦争、内戦、テロ、空に海に陸に事故、事件と血生臭い話に満ちみちているし、国内は国内で、殺人、麻薬、事件、事故、公務員の不祥事などなどと悪いことは何でもござれである。何故こうした忌まわしいことばかり起きるのかと言う疑問に対しこの四季雑感19号(2012.6)で、太陽活動極小期現象のせいだと考えると、全てが解決すると書いたことを覚えている、
 太陽活動極少期現象が深刻になったのかどうかは知らないが、今年は一段と気象の異常が激しくなっているようだ。太陽活動極少期現象とは地球の冷却化が進むと言うことであるが、一方では、地球温暖化が急激に進んでいるとも言われる。今の地球上になぜ正反対の現象が同時進行すのか知りたいと思う。46億年前に誕生した地球の歴史の中には、温暖化と冷却化の時期が交互に来ていた。冷却化の最たるものは、8億年から6億年前の原生代に起きたスノーボールと言う「全地球凍結時代」で数百万年から数千万年続いた。最大の温暖化は1億年前の白亜紀中ごろの「超温暖期」である。

 太陽活動極少期現象とは、『太陽活動が鈍くなり、それに伴って地磁気の活動が鈍り、オーロラが低くなり、地球を宇宙線から守るシールドの能力が落ちる。そのため地上のあらゆるものは、大量の宇宙線を浴びてしまう。特に動物の脳細胞には正常な判断を狂わせるような様々な悪い影響を与えるようになる。このために本来なら起きるべきではないことや、やるはずがないようなことをするようになる。これが上記の様々な出来事を引き起こす遠因になっている。また、いろいろな国々の為政者の頭脳判断が狂うため、平和を壊し、民衆の望むこととは反対の方向に進むなどの異常な行為に走るとか、さらには、宇宙線が増えると大気圏の雲が増えて太陽光が遮られ一層寒冷化がすすむ、』 と言う悪現象が起きることだ、と書いてあるものを読んだ。たまたま、この文章を書いているときテレビが報道していた長崎の女子高校生の首切り殺人事件など、まさに太陽活動極少期現象の影響をもろに受けたものであろう。
 一方、寒冷化とは逆に、現在進んでいる温暖化は、白亜期の温暖化と決定的な違いがある。まず、温暖化の原因だが、大気に放出される温室効果ガス (二酸化炭素、メタン、対流圏オソン、フロンなど) の増加が白亜期は主に火山活動が原因だったのに対し、現代の温室効果ガスの増加は、人類が化石燃料を燃やすために出るものであることだ。
 もう一つは、温暖化のスピードである。白亜期の温度上昇速度は100年で僅か0.000025度Cしか上がらなかったのに、現代の上昇速度は、100年でなんと1~4度Cという超ハイスピードである。因みに、今から5600万年前にも地球温暖化があったが、そのときの速度も100年当たり0.025度Cと遅かった。今のスピードで温暖化が進んだ後の結果はどうなるか、考えると恐ろしくて目が回りそうになる。要するに人間を含めた生物 (生命体(注))の絶滅である。絶滅までは生きていないけど、今現実の身の回りの事件や事故などには巻き込まれたくないものである。
(注:増殖と破損部分を修復できる機能を持った細胞で構成される物体。動物・植物)
 以下の話を太陽活動極少期現象のせいにするのには無理があるけど、そうそうあることではないので、無理して太陽活動極少期現象の仕業にしてみた。私の胃癌とアルゼンチン国債のデフォルトの話である。
 私は毎年5月に胃カメラの検査を受けている。そしていつも異常なしできた。それが今年に限り、「胃癌がある」、と医師に言われた。70歳を超えた10年前から3回も生死に関わる病気を何とか切り抜けてきた私には、癌の気はない、という思い上がりがあったが、それが一挙に打ち砕かれてしまった。正直、目の目が真っ暗になった。それから7月末までの2か月、”どきどきひやひやはらはら”して暮らした。かかりつけ医が、今年からは2年に1度でいいでしょうと言うのを、女房が今年もやりなさいと言うので受けたところ、小さいのを発見したのだ。女房には常人よりかなり強い予知能力があるのは結婚以来数え切れないくらい体験してきてはいたが、今回も改めて女房の能力に助けられた。早期癌で早期発見のお陰で内視鏡で切除(ESD)することが出来、10日間の入院で済んだ。癌と言う強烈なインパクトのある病気なのに、終わってみるとちょいと風邪をこじらせた程度のダメージしか感じない。ましてや気分は奈落のそこから這い上がったように爽快である。発見が早いか遅いかで胃袋を取るか取らないかは、残り人生の少なくなった老人には、その後の生活が天と地、地獄と極楽もの差がある。私の癌は12mm X 10mmで、5年くらい前からできていいて、このほど漸く目で見えるほどまで成長したのだろうと医師は言っていた。だとすると、今は転移もなく完治したことになっていても、すでに粘膜の中のどこかに新しい細胞がうごめいているのかも知れない。まあ見えるようになったら、また内視鏡切除すれば良い訳であるが。ただ、医者嫌いの老人にこれだけは忠告しておきたい。『俺は医者は嫌いだ、自分の体は自分が一番良く知っている、どこも悪くない、なんて威張っていられるのは精々50台代くらいまでで、60も過ぎたら強がりは絶対に駄目だ』、ということを。

 またまた話がとんでもない方へ飛ぶ。冒頭でお断りした、題材が四散しているというのは、こうゆうことなのである。最近アルゼンチン大統領府が世界の主要紙に全面広告を出しているのを気がついた方もいるだろう。関連の新聞記事も時々出る。それでも、アルゼンチン国債のデフォルトの話なんて、ほとんどの方は興味を持っていないと思うけど、アメリカの裁判所は、とんでもない利己主義だと言うことを知ってもらおうと、若干無理して書いてみた。ほんのさわりだけなので、どうぞ読んで頂きたい。
 『1990年台始め頃のラテン・アメリカ諸国は、それまでの暗黒の80年と言われた経済不況から抜け出し、国有企業を民営化して生産性があがり、外国の投資も増えた。調子に乗って国債をどんどん発行して経済はV字型に回復した。ところが、アルゼンチンなどは、民営化して政府に入った資金を、他の経済発展に回さないで、大統領を始め国会議員や政府役人が私服を肥やし、果ては労働組合の役員までもが、おこぼれに預かったということである。結局生産性は上がらずインフレは進み、外資の引き上げが始まった。さあ大変だ、政府は国債をどんど発行して外貨を調達した。これが、今問題になっている根源である。日本でも円建てで「さむらい債」とか言われて売り出された。これが2001年に遂に返済に行き詰まり、債権者と相当無理な交渉をして、額面を70%も割引き、残りを40年の年賦で合意した。した、と言うより、させた、と言うべきかもしれない。債権者は合意しなければ今持っている国債は紙くずになるといわれ、泣く泣くサインしたのである。そこで、この70%割り引かれた債権に目をつけた米国の禿鷹ファンドが、さらに安く買いたたいて手に入れた。そして、アルゼンチン政府はその額面通りの金額を払え、とニューヨーク連邦地裁へ訴えた。額面通りとは、70%割り引く前の元の金額である。100万円の国債を多くの人は泣く泣く30万円に切り下げ、さらに償還は40年でサインしたのに、米国の禿鷹ファンド「エリオット・マネージメント」は、30万の債権をさらに買い叩いて手にいれ、今度はそれを元の額面の100万円で買い戻せとアルゼンチン政府に要求したのだ。訴えた裁判所には、さらに悪い奴がいた。ニューヨーク連邦地裁のグリーサという判事は、なんとこの訴えを認め、”アルゼンチン政府に全額を払え。払わないのなら、他の債権者(70%デフォルトで合意した人達)への支払いもしてはならない” との判決を下だしたのである。』
 あいた口がふさがらない。米国の裁判所の理不尽な判決にはあきれてものが言えない。折角一生懸命過去の為政者の尻拭いをしている現政府を、いじめる米国の悪辣なやり方には腹が立って腹が立って仕方がない。

 こんな奴が出てくるのも太陽活動極少期現象のせいかもしれない、とでもしておけば、仕方ないと腹の虫も少しは収まってくれるが。久しぶりの四季雑感なので題材がまとまらず文章が冗長になったことをお詫びする。  (2014.7 28記)

(写真説明) スノーボール、凍った地球。 24億~22億年前に最古の氷河時代を経験した地球は、温暖な気候を享受していた。8億年~6億年前に再び急速に冷え込み、新たな氷河時代がを迎えた。スノーボールとなった地球は赤道で零下30度、局地では零下50度、地球を覆う氷の厚さは陸で数千メートル、海で千メートル、生物のほとんどは死滅した。写真は朝日新聞出版発行 「地球46億年の旅,第8号」 より。