図1 降下するホイヘンス
先週、土星の最大の衛星、Titan (タイタン) からの鮮明な映像がテレビや新聞で報道されました。
遥か彼方の惑星空間からどんな地球誕生の秘密が明かされるのでしょうか。
1997年10月に打上げられた NASA の探査機カッシーニは 35億km という長旅の後、昨年6月に土星を周回する
軌道に入り、今年1月14日、ヨーロッパ宇宙機関ESAの小型探査機ホイヘンスをタイタンに着陸させました。
このプロジェクトは米国と欧州の緊密な協力の下に達成された一大事業でありました。
タイタン の空気は濃い メタンガス に似たものです。地表の温度は −180℃ とのことで液体の水は存在
しないかも知れませんが、古代地球とよく似ており、何らかの生物が存在する可能性もあるといわれています。
タイタンはこの大気に突入してから主パラシュートを開き、秒速50mで降下します。カッシーニが最後は
秒速5m程度まで減速し、横方向には秒速1.5m程度の速さで着地します。、今日のニュースでは、着陸地点は
海辺の砂浜のような場所だったらしく、「ドスン」 とではなく、「ピシャッ」 と着地したそうで衝撃を感じて
いなかったそうです。
写真1
図1 は想像図ですが、タイタンは高度 700m でライトをつけて降下したそうで、
ホイヘンスが地平に隠れて見えなくなるまでライトは点灯していたことがカッシーニによって確認されています。
写真2 メタンの川
写真1 はカッシーニから放出されたホイヘンスがタイタンに着陸後に撮影したもので、
10-20cmの石が写っています。この色は本当の色だということです。これに先立って、タイタンへの降下中に撮影
した映像の中には、支流が集まった川の流れや山脈のような地形など、興味深いものが沢山ありました。
今日のニュースでは、
写真2 のような浸食された地形には、現在でもメタンの雨
が降りメタンの川が出来ているようだということです。この写真は16km上空から撮影されたもの。
カッシーニは土星への旅の途中、1998年と1999年には金星に接近、2000年には木星に接近し、鮮明な画像を
送ってきました。
写真3 タイタンの大気層
昨年6月、土星の軌道に入ってからは、土星やその周辺の多くの月の詳細な写真を送ってきています。
写真3 はカッシーニが撮影したタイタンの映像です。表面を覆うメタンガス
の薄紫色の大気層が美しい。
また
写真4 はあばたのような表面を持つ月フェーべの写真です。
ホイヘンス (Huygens) は土星の輪や衛星を最初に発見したオランダの物理学者・天文学者の名前です。
写真4 あばたの月 フェーベ
昔、物理で 「ホイヘンスの原理」 を習いましたが中身はすっかり忘れていました。
今回調べなおしてみると、簡単に言えば、「平面波は波面上の各点から出る球面波の表面をつないだもの」
とでも言うもので、アンテナの理論と深い関係のある原理です。
一方カッシーニは、土星には内側の輪と外側の輪があることを 1675 年に
発見したイタリア人の天文学者 Cassini の名前に因んで命名された探査機です。
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さて、この栄光あるカッシーニ・ホイヘンス計画があわや水泡に帰しかねない重大な危機に瀕したことが
一時期ありました。次号ではその物語をご紹介します。