日本郵便 (JP) から、添付写真のような広告が届きました。日本天文学会の元会員としては気になる代物で、これは申し込まなくてはと考えていますが、民営化の象徴みたいな話ではあります。画像を見ると、多くが宇宙や衛星のイラストで、我がk-unetホームページを飾る天文写真のようなものではありません。
その昔、KDDが 「宇宙通信」 の実験を開始した頃のこと。研究所が直径20mのカセグレンアンテナを高萩の実験所に設置しました。このアンテナの性能を試験するためには電波星を利用するのがいいと聞き、三鷹にある東京天文台の学者先生にご意見を伺いに行ったのです。赤羽賢司先生という謹厳な大学者と森本雅樹さんという駄洒落好きな
当時KDDは東京オリンピックを翌年に控え、短波通信に代わる大容量通信回線として、海底ケーブルTPC-1を用意すると同時に、このアンテナで衛星通信による国際電話サービスを実用化しようとしておりました。実はこのアンテナの性能には疑問があり大きな研究テーマだったのですが、本社としては電話サービス開始が至上命令。研究所の実験期間延長の要請など耳を貸すどころか早く実験を止めろと矢の催促です。そこへ先生方から電波星の電波強度測定の依頼があったのです。
この頃、電波で宇宙の構造を探る電波天文学が世界的に注目されていました。電波を測定するアンテナは 「電波望遠鏡」 と呼ばれます。東大の東京天文台でも当然これに力を注いでいたのですが、特定の周波数しかデータがありません。そこで注目されたのが、KDDが使用していた通信用の4GHzと6GHzの電波。是非このアンテナで 「さそり座」 にある 「電波星Sco X-1」 の電波強度を測定してほしいと依頼されたのです。
電波を出す 「星」 ですから昼間でも 「見える」 はずなのですが、指定された天空の位置では全く電波が受信できません。アンテナも、使用した受信機の感度も問題はありません。がっかりして先生方に報告すると、 「それは素晴らしい」 とおっしゃいます。全く狐につままれたような話でしたが、先生方のデータからの推測によると、高い周波数での電波の強さは、KDDの受信システムの感度から考えると
受信できるかできないか瀬戸際のレベルなので、 「受信できなかった」 ことは貴重な発見だったのだとか。実験は大成功だったのでした。 ヘエーー?
このような 「事件」 から先生方におだてられ、小生と横井寛さん (k-unet会員) がこの測定結果を専門の雑誌に発表 (右図) するハメとなったのですが、そのためには日本天文学会の会員になる必要があるとのこと。しかも論文は英語でと! 何故英語ですかって? 同学会の雑誌は全部英語の論文集なのでありました。
その後、アンテナの性能試験で得られたデータを料理して何本かの論文を発表したのも遠い思い出。切手発売で思い出した、元天文少年のお話でした。