Sugar & Salt Corner
No. 43
2010年9月13日
佐藤 敏雄

人間型ロボットが宇宙に

NASAはGMと組んで、本年11月1日、Robonaut 2(R2)と言う名の人間型ロボット(ヒューマノイド)を、国際宇宙ステーション(ISS)に送って長期滞在させ、宇宙飛行士と一緒に仕事をさせる計画である。R2は、器用な腕と手を持ち、物や道具を人間と同様にいじることができる。宇宙飛行士は、R2をISSの研究室に置き、スイッチをひねるとか、エアフィルターを掃除する、あるいは道具を支えるなどの仕事をさせる計画。
Robot1
 
この目的は、人間型ロボットが宇宙でどのように振舞うかを調べると同時に、宇宙飛行士に第2の「手」を与えることである。この経験により、将来、更に改善されたロボットがISSの内外で、科学実験や修理作業などの複雑な仕事の助手を務められるようになるであろう。
 
ロボットは自動的にあるいは遠隔操作で仕事ができる。ISSの宇宙飛行士はパソコンでロボットを操作する。地球からも直接、制御することはできるが、数秒間の遅れがある。通常、R2は任務の指令を受けて自動的に仕事をするが、NASAは人が特殊なスーツを着て、その身振り手振りで指令を送ることの試験も行っている。将来、R2は、宇宙探査において強力なツールとなろう。
 
しかし、何故、人間型ロボットか?それは、本来ISSが、5本の指と2本の腕を持つ人間が操作することを念頭において設計されてきたからである。人間型ロボットなら、人間ができる仕事をそっくり正確に実行することができる。
Robot2
 
R2はスターウォーズに出てくるロボットにちょっと似ているが、今のところ、脚や車輪は付いていない。腰から頭までは101cm、体重は150kg。本体はアルミと鉄の部品で出来ており、350のセンサーと42の自由度を持つ。腕の長さは80cmで9kgの物体を持つことができる。手は12の自由度を持ち、親指は4、人差し指と中指は3、他の指は1の自由度を持つ。
 
ヘルメットの眼鏡部分には4個の可視光カメラがあるが、その内の2個はロボット並びに操作員のための3D対応のもので、他の2個は予備。口の付近には、距離感覚のための第5の赤外カメラがある。頭部はカメラで一杯なため、コンピュータは胴体の中に収められている。人呼んで「R2は腹で考える!」。 「強い腕と筋肉、腰から上は自分そっくりだ」と担当者は笑う。
 
当初NASAは、宇宙で使うときに何が必要となるかを調べるため、地上で使うつもりだったが、これを見たミッションマネジャーがすっかり感心し、ISSに送ることを決めた。与えられた時間は6ヶ月しかなかった。
 
第2世代では、ISS内を移動できる歩行型となる予定。また、第3世代は宇宙ステーション外で作業できるものとなろう。このRobonautは、2015年を目指す日本の計画に先んじて、1000日以内にヒューマノイド・ロボットを月に送るというProject Mの一部でもある。
 
現在R2は、打ち上げに備え、クッションの詰まったアルミ製の箱Structural Launch Enclosure to Effectively Protect Robonaut (SLEEPER) に収められている。

以上 

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IEEE Spectrum 誌2010年9月号の記事から紹介しました。なおネットで、Robonaut で調べると2003年頃からの記事がたくさん見つかります。

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