メーカー間、事業者間の設備機能の互換性がW-CDMAハードウエアの最大の問題であり、それが解決されて いない設備を事業者が設置していることが問題をさらに複雑化させている。多くの携帯電話事業者は UMTS標準の2002年3月版について試験を重ねているが、英国のOrange社によれば、2002年12月版に 収められた変更によると、ハンドセットではW-CDMAとGSMとの間のハンドオーバーが必須事項となった。 更に多くのUMTS事業者は更なる変更を含む2003年3月版に基づいて商用を開始しようとしている。 ドイツ銀行のアナリストは、各バージョンはバックワードコンパチ(新バージョンでも 旧バージョンネットワークで使用可能)だとされてはいるものの実際にはその保障は全く無いと指摘している。 旧バージョンで作られたハンドセットはネットワークに新バージョンが導入されたときうまく 動作しない可能性が高い。ノキアとソニーエリクソンも3G電話機を投入したが、現在UMTSハンドセット を量産しているのはモトローラとNECの2社だけである。
変更され続けている標準を使って行われている支離滅裂なネットワーク試験が、W-CDMAネットワーク
展開上の最も困難な側面であり、悪名高い3G/2Gハンドオーバーの解決を妨げている。ハンドオーバーは、
利用者のハンドセットが一つのセルから他のセルのエリアへと移動する時に発生するもので、移動通信網を
「移動」たらしめるための基本的な機能である。
純粋な2Gネットワークにおいてすら、ハンドオーバーは極めて複雑なプロセスである。信号強度や基地局が
空いているかどうかなどは、呼が切り替えられる前に決定されなければならない。W-CDMAとGSMのハンドオーバー
では、この二つの異なった技術がうまく連携しなければならないので更に複雑となる。また、3Gハンドセット
で利用されているサービスの機能(音声、ビデオ、動画、データ)に対しても、ハンドオーバーに先立ち
2Gネットワーク側で十分な準備がなされていなければならない。
英国ハチソンのネットワークではこの問題が解決されていない。NECのe606ハンドセットで3Gの カバレッジ外に出てみると、シームレスなハンドオーバーが行われず、毎回、呼は切断されたという 体験談が報告されている。ハチソンは英国の人口カバレッジ60%でサービスを開始した。 それも主要な道路沿いに限られ、3G/2Gハンドオーバーがなるべく起こらないようにしている。 既成の通信事業者であるVodafoneに言わせれば、W-CDMAネットワークを市場に出す時には、 95%の呼接続率を要求するという。
通信事業者は既存の2Gと2.5G(GPRSなどの高速パケット伝送システム)設備からできるだけの収益を 搾り出そうとするであろうから、このような技術的な障害がある以上、今年中に更なるW-CDMAの商用化が 行われるとは考えられない。英国、イタリア、ドイツといった主要な携帯電話市場では2004年には ネットワークができるであろうが、ヨーロッパ全域にわたる広範なW-CDMAの商用サービスは2005年以前 には実現しそうもない。免許のオークションから5年もたつのにである。